2021年4月1日 (木)晴れ

ユニフォームのように気に入って着ていたグレーのパーカー。6年ほど着ていたらあちこち破れたり穴があいたりで、ちょっと恥ずかしくて外には着て出ていけなくなってしまった……。

どうしたものか。捨ててしまうのはもったいないが、着て歩くのは恥ずかしい。こんなとき、頼りになるのは管理人のまつげさんだ。

「お店の前を通りがかって気になっていたところがあるんです、お直し。鮎原の方にある美世(みせ)衣料品店っていうお店です!行ってみてくださいよ~。ためしに私のワンピース、出してきてください!」と、ふさふさのまつげをぱちくりしながら応えてくれた。

さすがまつげさんである。開けたことのない扉も、通り過ぎそうになる路地もまつげさんは見逃さない。ちゃっかり預けられたまつげさんのワンピースを持って伺ってみることにした。

目印は黄色い看板らしい。五色町鮎原の産直をこえてしばらく行くとすぐにお店がみえてきた。なるほど、黄色が目印だ。

しかし、お洋服のお直しははじめてでどうしたものか、しかも持ってきたのはまつげさんのワンピース……、恥ずかしいな。お店の前でウロウロとしていたが、ええい!と腹を決めてお店に入ってみる。

ミシンがいくつかならび、きれいに整頓された店内。そっと引き戸をあけて入ると、ピンポーンと音がなる。なんだかちょっと懐かしい感じで安心する。しばらくすると奥から店員さんが出てきて「はい、どうされましたか?」と、声を掛けてくださった。

「お直ししてくださると聞いたのですが……」と応え、まつげさんのワンピースをおもむろに出してみる。ボタンのところがさけて破れてしまっていたようだ。「この穴ですね、わかりました。破れた箇所を同じ色の糸で縫ってみますね、仕上がりは3~4日かかります」とワンピースを受け取ってくれた。

この壁にあるのはチャックですか?と訪ねると「そうですね。チャックのお直しもしていますよ」と教えてくださった。チャックが壊れたりしたら、ついつい諦めて買い替えてしまうのだがこうして修理してくださるのか……とちょっと驚く。

「こうやってもともとついていたチャックの糸を切って、外して、付け替えていくんですよ」そういいながら、作業風景を見せてくださった。

お店の名前のとおり、ここの店主は美世さんとおっしゃるそうだ。もともとお母さまがここにお嫁に来られたときに、布団やはぎれの販売をここではじめたのが50年ほど前。

美世さんは洲本市役所の近くにあった洋裁学校で、お洋服の基本的な作り方や、パターンの引き方を学んだのだとか。その後、自然とお母さまがやらなくなって空いたスペースで、衣料品店を開かれた。

最初はお洋服を作ったりもしていたそうだが、次第にお直しの仕事が増えていったのだという。

「いまはお洋服が安く手に入るから、直して使っていただけるってうれしいですよね。最近はネットで買ったけどズボンの裾があわないとか、サイズが大きいとか小さいとか。なるべく元のイメージのままでお直しして着ていただけるようにします」。

アメージング!サイズが合わなくなった服もお直しすれば着られるなんて発想がこれっぽっちもなかった。愛着のある服はもちろんだが、買ったものの大きくてどうしようとか、小さくて入らんなと悩んでそのままになった服がいくつか思い浮かんだ。

美世さんのお店にはいくつかミシンがならんでいる。好きな生地をもっていけば、このように端を始末してストールに仕上げることもできるのだそうだ。これは巻きロックという方法だとか!おもしろい、ミシンの世界。

そういえば昔は、母親が裾直しをしてくれたりしていたなぁ……なんてことを思い出す。今はミシンが家にある家も少ないのだろうなぁ……。「春になると制服のお直しや、入学式や卒業式のためお洋服を直しにこられる方も多いですよ」と美世さん。

忘れていたが自分のパーカーも直していただけるのか聞いてみることに。

「縫ってお直ししますか?どんな風にしたいかアイデアを持ってきていただければ、できる範囲でお応えします。たとえば糸を変えたいとか、こんな布を貼りたいとか。どんな風にしたいか膨らませていただいて持ってきていただけたら……」と、美世さん。

うれしいではないか!自分の服がそんな風に生まれ変わるなんて。これは、どんなのがいいかちょっとよくよく考えてお願いしてみることにしよう。まつげさんのワンピースを預けて、お店を後にした。

お直しという方法を知らなかっただけに、なんとも新しい収穫であった。そうだよな、服も大切に着れば何年でも着られるのだ。古くなれば買い直せばいいと思っていたが、やっぱりお気に入りは大切にしたい。

パーカーをどんな風に生まれ変わらせてもらうのか、それを考えるという楽しみをいただけて、ホクホクである。あぁ、今日もいい一日であった。

・・・・・・後日談。さけて破れてしまっていたまつげさんのワンピース、無事にお直しされて返ってきた。受け取りにお店に行ってきたまつげさんも「大切なお洋服がまた着られるっていいですね~。ひでおさん、ありがとう!」と、なぜだかお礼を言われてしまった。私がお礼を言いたいくらいである。またパーカーの修理のお願いに伺うとしよう。


美世衣料品店

所在地:兵庫県洲本市五色町鮎原小山田27

電話: 0799-32-0225

営業時間:9:00~18:00

定休日:日曜日

この日記を書いた住人

島ひでお

最近、洲本市に引っ越してきた移住者1年生。住み心地のよい暮らしをしたいけれど、おうちがまだ整ってないので、洲本市のいろんなお店で生活が豊かになるものをそろえたい。お店もどんどん開拓して、地元の人にも出会ってみたい。アウトドア、キャンプやサウナが趣味。

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