皆さんこんにちは!トウダイモトクラ荘住人のさいとうです。

今回お邪魔しているのは、洲本の老舗御菓子店舗・長手長栄堂。前半の工場編に引き続き、後半は堀端筋本店での取材の様子をお届けしていきますよ!

堀端筋本店。前編で紹介した工場から、歩いて5分くらいの距離にある。
お店の奥には落ち着いた内装の茶寮(イートインスペース)が。

■しっとりした雰囲気の茶寮で「うかれまんじゅう」を食す

さいとう

こちらのお店が本店として機能し始めたのは二代目のお父様の代になってからということでしたね。

長手さん

二代目にあたる父親は、一言で言うとアイデアマン。おまんじゅうにお醤油を足してみたり、他にはないものを取り混ぜて、なにか新しいものをつくりたいという、好奇心旺盛な、前向きな気持ちをもった人でしたね。

ここで運ばれてきたのが「うかれまんじゅう」。上品な甘さが特徴の酒まんじゅうだ。

長手さん

実はね、この酒まんじゅうのネーミングも父が行ったんです。

さいとう

う〜む、ほんのりとお酒の香りが華やかな酒まんじゅうに「うかれまんじゅう」と名づけるとは…脱帽のセンスです!お酒に酔ったときのワクワクふわふわした感じがよく伝わる、秀逸なネーミングですね!

では早速、いただきま〜す!

もっちり、しっとりとした皮に包まれたこしあんは、口の中でほどけるような優しいくちどけ。あんこの上品な甘みと共に、甘酒のようにやわらかな香りがふんわりとひろがって・・・

さいとう

ん〜!絶品ですね!

長手さん

長手のあんはご贔屓にしていただいてる方も多くって。お菓子によって、こしあんだけでも何種類も製餡するんですよ。
お菓子によって、使用する小豆の種類から変えることもあります

長手さん

例えば、このみかさは粒あんを使用しますが、中に割栗が入ります。お召し上がりの際、栗と粒あんの両方の食感が楽しめるように考えて製餡を行っています。製餡が命で、こだわりがありますね。
そこがやはり、長年の長手の特徴だと思います。

■創業時からのあんへのこだわり

長手長栄堂のあんへのこだわりは、初代・栄一さんの時代まで遡る。神戸で修行を積んだ栄一さんは、甘味を控え、小豆の味わいがよく感じられるさらりとしたくちどけのあんを得意としていたという。

長手さん

ですが、時代の移り変わりとともに、皆様に好まれる味わいは変化していきます。ですので、商品の見直しは定期的に行い、その時代に合った味わいのお菓子を提供しつづけられるよう、努力しております。

さいとう

伝統の味を守りながらも、現代の嗜好に合う商品を生みだし続けるのは、本当に大変なことだと思いますが…

長手さん

そうですねえ。やっぱりね、真剣に、熱くなればなるほど、こう…ね、夫と私で意見の交換を行うときに…口論みたいになることもあるんです。ふふ、まわりのスタッフさんたちには「夫婦喧嘩じゃないからね」って言いながら…(笑)

長手さん

スタッフさんたちや家族で協力しながら良いものをつくっていけたらなと。最終的な目的はそこなのでね。

時代の変化に伴う消費者の嗜好の変化に合わせ、老舗の味に甘んじることなく調整を繰り返すという。さらに、お菓子づくりは常になまものとの対話。原材料である果物や小豆も、毎年少しずつ風味が異なるため、細かい調整が必要だ。また、旅先などで美味しいお菓子に巡り逢ったタイミングで、自社製品に活かすために調整を加えることもあるのだとか。

長手長栄堂に限らず、お菓子店舗ならどこでも同じように工夫を行っているため、特別なことは何もしていないと控えめに語る奥様。だが、三代にもわたり事業を続けてこられたのは「より良いものをつくりたい」とたゆまぬ努力を惜しまなかったからこそなのだろう。

■三代目奥様が語る今後の展開と夢

さいとう

ちなみに、今後を見据えた展開など、ありますでしょうか。

長手さん

新しい風が吹けばと。

さいとう

新しい風?

長手さん

ええ。実は今、娘夫婦が京都でお菓子修行中なんです。子どもたちが帰ってきたら、彼らを支えながら長手の味を守っていければと考えております。あとは、二代目と三代目が共同で開発した、なるとオレンジスティックですね。

長手さん

わたしね…あの商品が、一人歩きといいますか、デパートに並んでいるというのが、ほんとうに、今でも夢みたいに思うんですよ。

ここまで多くの方々にご賞味いただけるとは思わなかったし、あんなに大きな賞をいただけるとも思ってなかった。お店を新しく出したいだとか、そういったものも、もちろん夢としてはありますけれども、それよりも とにかく良いものをつくりたい。ちっちゃなお店ですので、スタッフと家族が和気あいあいとお仕事をする、その温かな雰囲気の中から、次の世代に残していけるようなものがつくられることを願っています。それがわたしの夢ですね。

親から子へ、子から孫へと三代にわたり洲本の、いや、淡路の人々に愛される長手長栄堂のお菓子。老舗の伝統を守りながらも決して古びない、やさしい味わいのお菓子は、「より良いものをつくりたい」という、つくり手の真摯な思いから生み出されるものだった。洲本にお立ち寄りの際は是非一度、足を運んでみてほしい。懐かしい味わいのお菓子が、あなたをお待ちしています。

■長手長栄堂(堀端筋本店)


所在地:兵庫県洲本市本町5丁目3-26
TEL:0799-24-1050
営業時間:9:00~19:00
定休日:不定休
駐車場:有
HP:https://nagate.com/