今回取材するお店は長手長栄堂。約90年のあいだ、洲本の街を見守り続けてきた老舗の御菓子店舗です。1994年には全国菓子博覧会で最優秀賞を受賞した「あわじオレンジスティック」を開発するなど、伝統の味を守りながら新しいお菓子にもチャレンジされています。

今回は工場見学編(前編)と、堀端筋本店編(後編)の豪華2本立て!お楽しみに♪

さいとう

こんにちは!トウダイモトクラ荘住人のさいとうです。

今回の取材は、なんと、お菓子工場!!
いやあ、お菓子工場、いいですよね。幼いころ、某チョコレート工場の児童書を読んで育ってきた私にとって、お菓子工場見学は一種の憧れなんです。今からその場所に足を踏み入れることができるなんて…!ああ、わくわくするなあ!

初めてのお菓子工場見学に、上がるテンションを隠し切れないさいとう。

さいとう

いざ、たのもー!…って、あら、結構かわいらしい外観。

いわゆる「工場」という無骨なイメージからはかけ離れた外観。看板には和風のお花柄があしらわれていて、なんかおしゃれ。
さいとう

こんにちは~!

\はいは〜い/

???

ようこそ、お越しくださいました。どうぞ、こちらへ。

中から出てこられたマダムは長手睦子さん。長手長栄堂三代目ご主人・長手康祐さんの奥様である。長手さんに導かれ、お店の奥の方へ足を進めていくと…?

■お店の奥へ行き着くと、そこは工場だった

さいとう

うわーっ!すごい!!

ぱっと見、普通の工場みたいだけど、ボイラーの稼働音に交じってお菓子の焼ける香ばしいにおいやチョコレートの甘~い香りが…間違いない、ここは夢のお菓子工場や!お店の外観からは想像できない中の様子に、テンションがとどまるところを知らないさいとうである。

さいとう

入り口からは想像できないけど、中はちゃんと工場なんですね。ちょっとびっくりしちゃいました。

長手さん

ああ、外観がお店みたいでしょう?ここは以前、と言ってもだいぶ昔のお話ですが(笑)店舗として使用していたんです。その名残ですね。

■九十余年・三代にわたり地元民に愛される店

長手長栄堂の歴史は昭和の初期から始まる。奥様のお祖父さまにあたる長手栄一さんが、現在の工場の場所で御菓子店を始めたのが昭和5年のこと。神戸で鍛えたお菓子づくりの腕の確かさから、固定客を獲得するまでに長い時間はかからなかったという。

長手さん

当時は神戸のものも、そう簡単には手に入らない時代です。

さいとう

今から約100年前!
明石海峡大橋もまだできていない時代ですもんね。

長手さん

ええ。橋ができる70年も前のお話です。淡路と神戸の心理的な距離は今では考えられないほど遠かった。そんな時代だからか、お客様の中には「神戸で見たお菓子を再現してほしい」という方もいらっしゃいました。

さいとう

「見たお菓子」を!?結構な無茶ぶりですよね(笑)

長手さん

ふふ、そういうお客様のご要望にお応えしていきたいという、向上心の強い方やったんやと思います。

初期の長手長栄堂は、工場のあるこの場所で、地力を着実につけていった。大きな転機がおとずれるのはお父さまが二代目に就任した後のこと。堀端筋の物件を購入・改築を行い、本店の機能を移転させたのだ。

さいとう

この時から、現在まで至る堀端筋本店の歴史が始まるわけですね。

長手さん

ええ。茶寮(イートインスペース)を整備して、おとずれたお客様にその場でお召し上がりいただけるようにもしました。

落ち着いた雰囲気の茶寮(イートインスペース)。後半の取材はこちらで行った。
長手さん

淡路島内に支店を出し始めたのも父の代になってからです。

さいとう

お菓子づくりに加え、経営手腕もあったと。

長手さん

昭和30年、40年代の高度経済成長期にあたりましたので、その追い風もあったんでしょうね。

シュークリームや洋菓子などの製造・販売もお父さまの代になってから。
さいとう

三代目である、旦那様の代になってからは、何か変わりましたか?

長手さん

二代目である父はお菓子の技術を初代から学びました。ただ、三代目である主人は「自分にはないものを学んでほしい」という先代の意向もありまして、和菓子づくりの本場である京都で修行をさせていただきました。

そのおかげで上生菓子と呼ばれる、ちょっと上等なお菓子はよりグレードアップしておりますし、旬ごとのお菓子…四月のおはぎや五月の柏餅、六月の水無月に、七月の葛餅…そういった、季節のお菓子を製造していけるようにもなりました。それが大きな変化ですね。

■代表銘菓・あわじオレンジスティック

さいとう

長栄堂さんの代表銘菓といえば、あわじオレンジスティックですよね。

長手さん

淡路島固有の柑橘類である「淡路島なるとオレンジ」を使用したお菓子ですね。これは、三代目である主人が、健在だったころの二代目と共につくり上げたものです。

あわじオレンジスティック。「鳴門漬け」と呼ばれる、淡路島なるとオレンジの皮の蜜漬けを、チョコレートでコーティングしたもの。1994年の全国菓子博覧会で名誉総裁賞を受賞した。
長手さん

毎年10トンほどオレンジを仕入れ,加工を行っています。

さいとう

10トン!?すごい量ですね!

長手さん

ええ。幸い多くの方々にご賞味いただいております。蜜漬けの後は引き上げ、水分を飛ばして細く切ったものをチョコレートにくぐらせていきます。

特殊な機械で蜜漬けを行うため、その準備を行うスタッフさん。手際よく淡路島なるとオレンジの皮が並べられていく。
チョコレートでのコーティングは、すべてスタッフさん達による手作業。
長手さん

オレンジの風味は年毎に微妙に違います。同じ手順で同じようにつくっても、同じ味が出ないこともあります。私のような素人から見ると「一緒やん」と思うくらいの微妙なことでも、違うんですよね、つくり手にとっては。

計量し、箱詰めされたあわじオレンジスティック。この後、商品として店頭に並ぶ。
長手さん

オレンジの酸味が弱いだとか、苦味を少し強く感じるとか、スタッフさんたちの意見が常に現場から上がってくるんです。その都度見直しなどの対策をとっております。わたしの気づかないこともきちんとフォローしてくれますし,本当に心強いスタッフさんたちです。

これからも彼ら彼女らと一緒に、皆さんに喜んでいただける、何か新しい商品をつくっていけたらな、と思ってます。

前編はここまで!

後編は、堀端筋にある本店が舞台。長手長栄堂が九十余年にわたって地元の人々に愛され続ける秘密に迫ります。乞うご期待!

■長手長栄堂(堀端筋本店)


所在地:兵庫県洲本市本町5丁目3-26
TEL:0799-24-1050
営業時間:9:00~19:00
定休日:不定休
駐車場:有
HP:https://nagate.com/