由良のお好み焼き屋さん「ほたる」にて、前編ではお店のメニューへのこだわりをお聞きしました。後編では店主・橋本さんのお客さまへの想いについてお話をうかがいたいと思います。

■すべてはお客さんの笑顔のために…

雨の日も風の日も、由良の川辺でお好み焼きを焼き続けている橋本さん。そんな橋本さんが大切にしている言葉があるという。

それが…

橋本さん:「ええ。ウチは「お客様ファースト」でさせていただいてます。(きりっ!)

橋本さん「たはっ(照)!!」

はあ。「お客様ファースト」、ですか。

いまいちピンと来ていない住人さいとう。「なんですかそれ。」

「?」となりながらも、取材をすすめていく住人さいとう。しかし、店内のいたるところにちりばめられた店長・橋本さんのこまやかな心遣いに次第に感服していくこととなる。

■その①・謎の卵

さいとう:「この、無造作に置いてある卵はいったい?」

常連さん:「ああこれ?勝手に食べていいよ。料理できるまで時間かかるから、これで小腹を満たすねん。」

橋本さん:「1個50円。」

常連さん:「えっ?」

橋本さん:「えっ?」

常連さん:「嘘ぉ…いつも勝手に食べてた…」

橋本さん:「気ぃつけ~よ、ツケとるで笑」

常連でも知らなかった1個50円の卵。サービスではないぞ!気を付けよう!

■その②・冷たいおしぼり

さいとう:「はあ、おしぼり気持ちいい~。キンキンに冷えてますね」(取材日の外気温は30度以上。)

橋本さん:「気持ちいいやろ?冷蔵庫で冷たく冷やしてあるねん。」

さいとう:「しかも厚手のタオルだからか、しっかりと拭ける感触がたまらんですね。はああ、気持ちいい~(ごしごし)」

橋本さん:「あはは、みんな喜んでくれます。」

左端に見切れているおしぼり。このグラス同様、しっかりと冷えている。

■その③二つのおでん

ふつふつと沸き立つ出汁の香りが食欲をそそる。居酒屋の定番といえばおでんでしょ!
こちらがみそ炊き。みそ炊きとは、簡単に言うとみそで煮込んだおでんのことで、
常連さんにも根強い人気を誇る。

さいとう:「あ、これ(みそ炊きの容器)鉄板の上で火通しとるんですね。こっちがみそ炊きで、こっちが普通のおでん。」

橋本さん:「うん。どっちもいるってお客さんに言われてな。」

常連さん:「うん!どっちもいる!」

さいとう:「お客さんの要望にこたえ続け…笑」

常連さん:「お客さんの要望にこたえ続けたけど、どっちも下処理が面倒なスジ肉がいっぱい(笑)でもスジはなぁ~外せらんな。」

橋本さん:「まあ、うちはその辺、お客様ファーストでやっとるから。」

なるほどである。

橋本さん一人で切り盛りする「ほたる」では、どうしても料理の提供に時間がかかり、お客さんをお待たせしてしまうこともある。お腹を空かせたお客さんのために小腹を満たすための卵や小鉢を用意する心配り。炎天下の中、お店に来てくれたお客さんのためにおしぼりを冷たい状態で提供する思いやり。「みそ炊きとおでん、どっちも食べたーい!」というわがまま要望に応え、その両方を用意する優しさ。すべては、お客さんのために。

納得。これが「お客さまファースト」ってやつか。

さいとう:「まさに、由良を愛し、由良に愛されたお店ですね。ちなみに、ご出身は由良のどの辺なんでしょうか?」

橋本さん:「出身はねえ…沼島(笑)」

そうなの?意外!

■創業理由は旦那さんの無茶ぶり?

南あわじ市沼島出身の橋本さん。由良はご主人の育った土地なのだという。ご主人との出会いがきっかけで由良に縁ができた橋本さんだが、お店を始めたきっかけを尋ねると驚きの回答が。

ここから本当の話をするね、という前置きで我々を翻弄する橋本さん。ここから、ってことは今までは何だったんだ?という常連さんの渾身のツッコミが炸裂した。

橋本さん:「家を建てるにあたってね、旦那には一つ信念があったの。「お金を稼ぐ家でなきゃ」って。」

さいとう:「うん?お金を稼ぐ家?」

橋本さん:「そう。家でお店をやれって。」

さいとう:「あ~!なるほどね、店舗併設型の家ってことですか。」

橋本さん:「それで、お前何ができる?って聞かれてね。これなら、って言ったのがお好み焼きだった。

さいとう:「あはあ、無茶ぶりですよね、けっこう」

橋本さん:「バイトで経験は積んでたからね。それから食べ歩きしたりして。それが27のとき。で、その時に子供が二人いてね。上が年長さんで、下が年少さん。もう、「保育所行けーっ!」って送り出して、「帰ってこーい!」って言ったら勝手に帰ってくるような感じ。ははは、もう、仕方ないもんね。」

さいとう:「いい子たちですね。」

橋本さん:「まあ…早いもんやね。」

懐かしげに目を細め、笑顔を絶やさずに語る橋本さん。しかし、初めての飲食店経営と、子育てとの両立は、決して平坦な道のりではなかっただろうと容易に想像がつく。

棚に飾られた橋本さんの似顔絵は、プロの似顔絵師となった長女さん作。クリソツである。

■由良の人々に愛され、由良の人々を愛するお好み焼き屋

さいとうの後ろの真新しい仕切り板と橋本さんの後ろのアクリル板に注目。

さいとう:「そういえば、この仕切り板、かなり新しい板で作られてますよね?」

橋本さん:「ああ、それね、常連の大工さんの手作り。

さいとう:「はい!?」

橋本さん:「(カウンター席を指さしながら)あそこの調理場の仕切りシートも作ってくれたんよ。コロナで時短営業って言われたときは、ちょっと勘弁してほしいなって思ったけど、それなりになんとか。やってこれましたわ。

大変な時も、お店を訪れる人々に支えられてきたと語る橋本さん。

常連さん:「そういえば、見てほしい動画があるねん。」

橋本さん:「これこれ!感激した、もう!知らない間に作ってくれてて。」

先日30周年を迎えたほたる。常連の人々が中心になって、橋本さんへ向けて「おめでとう動画」を作成したのだとか。総勢60名を超える出演者に、尺は驚きの12分14秒。結婚式ムービー並みの熱意に驚きを隠せない住人さいとうである 。

橋本さん:「動画作ってくれた人からラインが来て、初めて知ったの。ひえ!と思ったね。こんなことしてくれてたんや!って。

さいとう:「サプライズ、大成功ですね。」

橋本さん:「そうそう。ほんま、だ~れも言ってくれてなくて…そういえば、この辺でカメラ回してたような気はするな笑。「何か気が向いて撮ってるんやな」くらいに思ってたけど…

常連さん:「見てるこっちはひやひやしたけどね。「かずちゃんにばれるやん!」って。」

橋本さん:「ははは、多分、そんなん気にしないだろうな、分からないだろうな、って思われたんやろな。本当に感激したわ~!!良かった、やってて、と思ったね。

橋本さんから繰り返される感謝の言葉は、すべてお客さんに向けられたものだった。常連さんによるサプライズに「感激した」と語る橋本さんだが、それも普段からお客様ファーストで頑張る店主・橋本さんの姿をみんなが知っていればこそ。なお、常連さんだけでなく女性一人でふらっと入っても、橋本さんとのお話が弾むこと請け合い。洲本市にこんな素敵なお店があるとは、まさに「灯台下暗し」。淡路にお住いの皆さん、由良の「ほたる」是非訪れてみてくださいね!

ほたる

所在地:兵庫県洲本市由良町144-4
電話: 0799-27-0717
営業時間:12:00~23:00

定休日:日曜日・月曜日

営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。

駐車場:有